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 朗読

2018年05月31日 | 未分類

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 やわらかな日差しを求め、海ユニットのAさん姉妹が
やってきた。朗笑のあとスタッフがAさんに新聞記事の
朗読をお願いした。
記事は3年前の毎日新聞「女の気持ち」欄に掲載さ
れた「質屋」という山形県酒田市の主婦の投稿である。
 引用させていただいた。

 「亡き母は昭和30年代から質屋をやっていた。
高価なカメラに高額を貸したが、父が見るとカメラに
レンズがなかったり偽ブランドバックをつかまされたり、
決してもうかっているとは思えなかった。
 しかし、私は質屋を通して様々な人間模様に触れた。

 ある夜、赤ん坊を背負った質素な女の人が入ってきた。
「この傘に100円貸してほしい。明日の子どもの遠足の
小遣いに」という。陰で様子をうかがっていた私にも、
もう用をなさないとわかる傘を母は品定めし、質札を書き
100円貸した。
 私は「何で貸したの?100円くらいあげればよかった
のに」と話した。母は「あの人は恵んでくれとは言わな
かった。恵んでしまえば、あの人のプライドを傷つけてし
まう。質札があるのであの方は立派なお客様」と答えた。

 毎月、月給日の少し前に決まって自分の腕時計を入れに
来る男性がいた。高校教師という。その人に欲しいだけの
額を貸していた母は、ある時こう言った。
「実は私の娘も教師だが、計画的にきちんと暮らしていれば、
毎月赤字にはならない。あなたももう少し計画的に生活して
来月は来なくてもいいようにしてごらん」。
 後に同じ高校に勤めることになった私は、彼が顧問をして
いるクラブの部員にいつも腹いっぱいのごちそうをしている
ことを知った。

 質屋とはただの金貸しのようで恥ずかしく思ったことも
あったが、人間の多面性を知ることができた。母はただの
金貸しではなかったと時折思う。
 
 読み終えてAさんは、フゥーと大きく息をついた。

    グループホームアウル 登別館

12:03 | 記事 nao