肌寒い4月のはじめTさんは入居された。
アウルの環境にも慣れ、生活に潤いが感じられる。
食後のくつろいだひととき、奥さんもやってきた。
新聞に眼を落しながらも静かな語らいに落ち
ついた時が流れる。
実務肌のTさんと読書がなにより好きな奥さんが
さわやかな初夏を迎えている。
先日、初めてTさんから「俺が生まれたのは、
旧樺太の泊居町(とまりおるちょう)だ」と聞いた。
今は、異国の地であるが、「子どもの頃、親父が
何度も教えてくれた」という。
「泊居町」は、樺太の中ほどにあった町。製紙
工場の町であった。
日々、新聞を読みながら往時の街並みを思い
浮かべているのかもしれない。
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