アウル通信　第134号

　ずっと思っていたことです。
　介護職の多くの方が、お年寄りから「ありがとう」と言われることがこの仕事のいいところと言います。つまり人から感謝される仕事ということなのです。もっと突っ込んでいうならば、私には豊かな思いやりの精神があり、喜んで人を助けることで喜びが得られるからこの仕事を選びましたとか、この仕事を続けていますというのです。
しかし、それはたとえ思いやりからなされた善い行いはどんなに感謝されようが、本来の私達の仕事の本質や価値とは違うのではないかと思うのです。善い行いをし、人から感謝され、そのことを喜びと感じる、それが介護職の本望であるというのは賞賛や奨励に値すると思うのですが、それはそれまでなのです。私たちの仕事は、誰かに賞賛や奨励されるためにしているのではないのです。
例えば、人を支援し感謝されたとしましょう。『ありがとう」と言われ誰もがいい気分を味わうだろうし、そのこと自体否定する何物でもありません。ですが、同じことをして人から感謝されるどころか、私たちの支援や行為を打ち砕かれるような場面に遭遇したとしたらどうなるでしょうか。私たちの気分は落ち込み、相手に対しいい思いを抱かなくなる人もいると思います。もしかしたら、自分の思いとは違う反応が返ってきたことで、逆切れし虐待行為へとはしったり、具体的な虐待行為をするとまでは行かないにしても、してしまう寸前であったり、してしまうかもしれないという感情を抱いたりしないだろうかと思うのです。つまり、私たちの仕事（介護や支援やケア）が、私たち自身に喜びをもたらすかどうかではなく、その中身を精査し、そうすることが正しいという判断と動機で仕事にあたることができているということが大切であり、結果そのこと自体が仕事への確かな価値となり喜びと感じることにあると思うのです。決して、他者の反応で僕たちの仕事の価値を決めてはいけないと思うのです。
　この仕事の価値の良し悪しは、そこにあるのではないかと考えます。ですから、もっと自分の仕事の専門性に自信と誇りを持つべきです。私たちの仕事が国民から支持されるためには、しっかりと自分の仕事の中味を精査し、見返りを求めた行いではなく、確固たるロジックを持ち、事にあたり続けることではないでしょうか。

感謝