クリスティーン・ブライデンさん、46歳の若さでアルツハイマーと診断され、余命5年でしょうと告知された人がいます。現在、確か56歳になられたと思います。診断から既に10年は経つでしょう。その時は、この後自分はどうなって行くんだろうと、「不安」と「恐怖」の中で生活していたと話しています。認知症と診断され、ご自分の言葉で世界中の人に伝えると言う行為は並大抵の事ではないと思います。それでも、「私らしさ」を奪わないで支援して欲しいという願いからでもあります。
 
 今年、北海道札幌の地で全国グループホーム協会主催による全国大会が開催されました。その大会のオープニングで、札幌の方で若年性の認知症と診断され、日々忘れ行く中でも、昔していたクラリネットを再び習い始め、その場で披露していただきました。先日、私もクラリネットを吹く機会があって吹いてみたのですが、口の形や吹き方、指の使い方、押さえ所、肺活力?とでも言うのでしょうか、かなりの力とコツと経験が大切な楽器であるとはじめて認識しました。簡単に吹ける物ではないことは私の中でのイメージで感じてはいたつもりでしたが、やはり経験を通して感じるものがほとんどであることも再度認識しました。
 
 私達の支援の在り方は多岐にわたり、答えを出そうにも出ないというのが真実でしょう。最近では、私達専門職のみならず、地域も巻き込んで支援の在り方を追求していくように、やっとなりました。専門職は専門職として、家族は家族として、地域は地域として、自分達の今することをするという意識がこれからの「その人」を中心においた支援体制となっていくでしょう。


 「その人なき支援」というのは、それぞれの関係する人のエゴが中心にある支援体制のことを言うのです。それぞれの感情を満たすために行う支援ではなく、「その人」が満たされる支援を行うことなのでしょう。生きていくこととリスクは常に一体的なものです。もし、何か事故が起こったとすれば、その責任を追及し誰がいいとか、誰が悪いとかばっかりのニュースや言葉が行き交っていますが、私達が目をむけなければならないことは、「非難」と「防御」ではなく、これからどうしていくか、今何をなすべきかと考え問う事の方がもっと大切なことなのです。

 幸いにもアウルでは、その人の状況に合わせてご家族が支援して下さっており、地域の皆さんの協力をいただいて支援の追及を行っています。

 彼らは言ってます。「今の私を支えて!」と。それがその人がそこに在る支援であり、私達の周りにいる人間が存在している意味ではないでしょうか。「その人なき支援」とは、自分自身への戒めの言葉として、常に持ち合わせていかなければならないものと日々追求して生きたいものです。
感謝

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