「かあさん!わかるかい!」息子さん達家族がNさんに話しかけている。
Nさんはいつも困った表情で首を傾げる。家族の人たちと一緒にいても何か落ち着かない様子。 孫が少し遠巻きに遊んでいる。
 息子さんは、月に一度、Nさんの髪をカットしに来てくれるのである。なんとNさんの息子さんは美容師さんなのである。その度にお孫さんを連れて来てくれる。おばあちゃんに、なつかない孫を見ている、どうもやるせない思いが胸を締め付けるのである。
 私たちは、家族の方々が来た時は、私たちの家族のように受け入れる様に心がけている。
いつ来てもいいのである。ここは家族の方々にとっては実家のようなものと思っているからである。私たちは、おばあちゃんの家、又は実家に帰った時に抱くなんとも言葉では言い表せない安心感を誰しもが感じたり、味わったりした事はないだろうか。何故かホッとするのである。何故か寝転がって、足を伸ばし、何をするでもない暖かい時間が流れて行くのである。グループホームは、何かそんな感情を抱くような家でありたいと願うのである。
 私たちは、Nさんとご家族との架け橋になるべく、その接点を探り、何気なく、少しずつ関わりを多くして行く。つねに徐行、徐行である。
「おばあちゃん!また来るからね!」
家族が帰る頃には「おばあちゃん!おばあちゃん!」のお孫さんの声がグループホーム中に何回も何回も響き渡るのである。気がつくと、Nさんの表情は、誰しもが孫と遊んでいる時のような、やさしいおばあちゃんの表情に変わっているのである。
 その時、私たちの表情もほころび、気が付くと、心がケアされているのである。
何とも不思議である。「家族っていいな」と改めて思わざる終えない光景なのである。涙が出そうになるほど、再び胸を別な意味で締め付けるのである。
 家族が帰り、にぎやかだったリビングには、静けさが漂い、いつもの生活に戻る。しかし、確かにその余韻は残りグループホームを暖かく包み込んでいるのである。
 何故か涙が止まらない。

感謝

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