―全てが崩れ落ちるとき―

痴呆性高齢者の家族であることは、時にとてもつらいことであると思います。私が一番最初に手にした、グループホームに関係する本の中に、痴呆性を患った妻をもつ夫の一文が記述されていましたので、ここでご紹介致します。

 「長い時間をかけて築きあげてきた結婚生活が、簡単に崩れ落ちてしまうのはとてもつらいことだ。私たちは60年近く一緒に仲良く暮らし、何か問題が起こった時には、いつもお互いに助け合ってきた。ともに困難を切り抜けてきたのだ。

 しかし、5年前小さな変化が起こり始めていた。それはゆっくりと忍び寄るように進行し、記憶障害という症状であらわれた。すべてが普段通りにはいかなくなった。私はそれが自分の間違いではないのか、私が正しくないことを言ったりしたりしたのではないかと思うようになった。私には何もわからなかった。妻に起こっていることが、実は病気の初期症状であることも、私にはわかっていなかった。私たちの家庭ではなくなっていた。妻は夜にも、「家」に帰るといって出ていこうとし、私を困らせた。私はとても気が張りつめていて、完全に見捨てられたように感じていた。最悪なことに、妻が私をわからなくなってしまった。彼女にとって、私はもはや存在していないのだ。あの時助けを得ていなかったら、私は絶望していたかもしれない。肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。

 グループホームで妻がケアされることになり、その日が決まったと知らされた時、私がどれほどうれしく、解き放たれた気持ちがしたかを言いあらわすことはできない。グループホームのケアがこれからも続くことを願っている。本当に必要とされていることだから。」

ある夫より

 私たちは、痴呆性高齢者だけではなく、そのご家族に対するケアも重要なこととして捉えています。私たちのもう一つの役割です。痴呆性高齢者の方が癒され、さらにそのご家族が癒されることが、私たちにとっての一番の喜びであると考えております。

                                      
                                       


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